韓国の基礎科学研究院(IBS)は11月12日 、梨花女子大学校(Ewha Womans University)にあるIBS量子ナノサイエンスセンター(IBS Center for Quantum Nanoscience)が、電子スピン共鳴(electron spin resonance: ESR)と走査型トンネル顕微鏡(scanning tunneling microscope: STM)を用いて個別の分子のスピンを画像化することに初めて成功したと発表した。この研究の成果は学術誌 Nature Chemistry に掲載された。
(写真提供:IBS)
情報機器のスケールダウンが進むにつれ、電子のスピン1つ1つをデータストレージの基本単位として用いる技術に関心が集まっている。これには、スピンの状態を正確に検出・制御し、スピン間の相互作用を正しく理解することが求められる。
STMは個々の原子の構造を正確に観察できる顕微鏡技術である。一方、ESRは分子のスピンの動的性質を測定することができ、スピンの量子的性質を利用する「量子コヒーレントナノサイエンス(quantum-coherent nanoscience)」に不可欠な技術となっている。今回の研究では、STMの探針(tip)にマイクロ波を加えることで、単一分子上でESRを起こし、2つの分子間の磁気相互作用を観察した。
論文筆頭著者のチャン・シュエ(Zhang Xue)博士はこの研究について「分子ベースのスピントロニクスデバイスの開発において重要な、非局在スピン(non-localized spin)間の相互作用を解明することにつながる 」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部