韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は同校の化学者が、遺伝子増幅を行うことなく、血中を循環する微量の腫瘍DNAを高い感度で検出できるリキッドバイオプシー(liquid biopsy)手法を開発したと発表した。2021年12月16日付。研究の成果は学術誌 Nano Letters に掲載されている。
血中の腫瘍DNAを検出するリキッドバイオプシーは、患者の組織を採取する生検よりも利便性が高く、血液には体内に存在するあらゆるがんのDNAが含まれることからも、有用な診断手法として注目を集めている。
現在、少量の変異遺伝子の検出に用いられている遺伝子増幅法のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)には、特に低濃度の場合に感度と変異性が低下するという欠点がある。
(提供:POSTECH)
POSTECHのパク・ジュンウォン(Park Joon Won)教授が率いる研究チームは、ソウル大学校医学部(Seoul National University College of Medicine)およびカトリック大学ソウル聖母病院(Seoul St. Mary's Hospital)と共同で、原子間力顕微鏡を用いてこのような欠点を克服できることを証明した。
開発したリキッドバイオプシー手法は、血中に含まれるわずか1~3個の特定の腫瘍DNAを検出できる高い感度と、100%近い特異性を示した。また、がん患者の標本に対し有効であることが確認された。
パク教授は「最終的な目標は、現在の手法を用いてがんの脅威から人類を解放すること」と指摘し、「認知症のバイオマーカーを最高感度で検出することもできる」として、この技術の応用性の高さをアピールした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部