韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は、同校の研究チームが、人工知能(AI)を用いて歪みを軽減し、光音響イメージングの精度を向上する方法を開発したと発表した。2021年12月16日付。この研究の成果は学術誌 IEEE Transactions on Image Processing に掲載された。
体内を進む超音波の音速(speed of sound:SoS)を正確に測定することは、光音響画像の解像度の向上につながる。しかし、筋肉、骨、脂肪等の分布により個人差がある音速を正確に予測するのは困難である。
同校のキム・チュルホン(Kim Chulhong)教授とチョン・スングァン(Jeon Seungwan)博士が率いる研究チームは、こうしたSoSの差によって光音響画像に生じる歪みを補正するディープラーニング手法を開発した。
従来の超音波または光音響イメージングでは、1,540メートル毎秒等のSoSの代表値を想定しており、これが収差(aberration)の原因となっていた。また、画像に生じるアーチファクトが解釈の妨げとなる場合がある。
この問題に対処するため、研究チームは媒体のSoSを任意に設定して歪みを生じさせた光音響画像と、音波シミュレーションに基づく歪みのない実際の光音響画像を用いてAIを訓練した。
(提供:POSTECH)
このAIモデルを使用した結果、光音響画像の歪みが軽減され、主信号周辺の線状アーチファクト(streak artifact)の強度が最大5%低下し、信号対雑音比(signal-to-noise ratio:SNR)が最大約25デシベル向上した。
特に、健康な人と黒色腫患者の手足の血管の光音響画像において、SoS収差が軽減され、解像度が向上したという。
キム教授は、「この技術を用いれば、高解像度の画像を迅速に取得できる。将来的には、四肢の血管疾患の診断やがんの病期診断、切除術における境界の決定等、さまざまな分野の臨床研究に応用できる可能性がある」と期待を込めた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部