韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は1月14日、同校の研究チームが、光音響画像(photoacoustic: PA)技術を用いて深部組織を観察する方法を開発したと発表した。この研究の成果は学術誌 Small に2021年12月1日付で掲載された。
キム・チュルホン(Kim Chulhong)教授とパク・ビュルリー(Park Byullee)博士が率いるPOSTECHの研究チームは、中国の天津大学(Tianjin University)のチームと共同で本研究を行った。
チームは造影剤として界面活性剤を取り除いた半導体高分子(surfactant-stripped semiconducting polymer)ミセルを用い、波長1,064ナノメートル(nm)のレーザーで、ラットモデルの生体内の腸と膀胱を最大5.8センチメートル(cm)の深さまで画像化することに成功した。PAの前臨床試験で達成された深度としては世界最高値となる。
PAは非侵襲的な画像化技術として注目を集めており、生体深部の臓器をより詳細に画像化するためのPA用造影剤の研究が進んでいるが、レーザーの波長の短さ(650 nm~900 nm)が深度を伸ばすうえでの制約となっていた。
(提供:POSTECH)
今回の研究では、1,064 nmの光を強く吸収する半導体高分子ミセルから界面活性剤を取り除き、PA造影剤として使用することで、深部組織の画像を得ることに成功した。
放射線を用いる通常のコンピューター断層撮影(CT)スキャンと異なり、キム教授のチームが開発したこのPA画像化手法は、被ばくリスクなしで深部組織の疾患を診断することを可能にする。
キム教授はこの研究について「大きな技術的価値を持つ」とし、「このような前臨床試験は人間を対象とした臨床試験を行うには必須であり、PAを早期に実用化することにつながる」と期待を表明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部