2022年02月
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毒性が低いバイオインク開発、安全な臓器の3Dプリントに道 韓国POSTECH

韓国の科学者らは、人体に適合できる新しいバイオインクを開発し、複雑でありながら安全な組織や臓器の3Dプリントを可能にした。

AsianScientist - 毒性が低いバイオインクは、人体と適合性を持つ複雑な組織や臓器を造形する上でのゲームチェンジャーになるかもしれない。これは、Advanced Functional Materials 誌で発表された韓国とニュージーランドの研究チームの調査結果であり、疾病治療などといった臨床応用にも役立つ可能性がある。

再生医療の未来として宣伝されている3Dプリントを使えば、科学者は自由にヒトと同じ大きさの臓器など、精巧なデザインを作製することができる。だが、多くの場合、作製されたものの安全性は、インクに左右される。インクが安全でない場合、3Dプリントで出来上がった組織は有毒なこともある。

脱細胞化細胞外マトリックス(decellularized extracellular matrix :dECM) はタンパク質と炭水化物から成る複雑で無細胞の網目構造である。dECMに基づくバイオインクを使えば、複雑なマイクロアーキテクチャを持ち、生化学的プロセスを促進する組織構造を形成できる。

有望ではあるものの、dECMから作った現在のインクは安定性が悪い。インクの多くは印刷適性と拡張性を向上させるために、有毒な紫外線 (UV) 光活性剤と他の材料の混合物を必要とする。さらに、他の成分を追加すると、作製した組織の生体適合性が低下する可能性があり、純粋なdECMが持つ生物活性特性を弱める。

そこで、バイオプリントをもっと安全なものにしようと、韓国の浦項工科大学校(POSTECH)のジャング・ジナー (Jang Jinah) 教授とそのチームは、ルテニウム/過硫酸ナトリウムを使用して、細胞毒性が低い光活性化dECMバイオインク (dERS) を開発した。ルテニウム/過硫酸ナトリウム (Ru / SPS) はUVに代わる光活性剤として機能し、チロシンなどの特定のアミノ酸と反応する。

dECMバイオインクにはチロシンを運ぶタンパク質が豊富に含まれているため、Ru / SPSを導入すると、チロシン分子間の内部結合が強化される。結合が早くなるため、dERSは複雑な形状を可能にする一方、生体適合性と再生能力は純粋なdECMに匹敵する。

チームは新しいバイオインクを使用して角膜と心臓組織の製造にも成功し、印刷の柔軟性と安全性の両方を向上させた。ソフトロボットから疾患モデルまで、幅広い応用に向けて開発した素材を使い3Dプリントされた様々な大きさの組織を製造できると考えている。

「dERSは、カプセル化された細胞の組織固有のパフォーマンスを構築し、センチメートル単位で生きた体積構造を製作できるプラットフォームとして使えます。この技術は、再生医療への応用に向け新たな道を開きます」とジャング博士は意気込みを示した。

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