韓国の基礎科学研究院(IBS)は1月5日、同院の研究チームが、量子ドット(quantum dot)を用いた光電子デバイスの効率低下につながるオージェ再結合(Auger recombination)という過程を抑制するための新たな方法を発見したと発表した。この研究成果は学術誌 Advanced Optical Materials に掲載された。
量子ドットは、独特な光学的性質を持つナノメートルサイズの半導体ナノ結晶であり、発光ディスプレイ、太陽電池、光検出器、レーザー等、光電子分野の様々な技術に利用されている。
(提供:IBS)
量子ドットで生じる非発光の再結合過程であるオージェ再結合は、ディスプレイ等の光電子デバイスの効率性を向上するうえで最大の障壁の1つとなっている。
量子ドットのオージェ再結合を抑制するための過去の研究は、量子ドットの構造的特性の変更や新たな量子ドット構造の合成に焦点を当てたものがほとんどであり、光学的環境の操作を通じてオージェ再結合を能動的に制御するための研究は不足していた。
IBSの分子分光学・動力学センター(Center for Molecular Spectroscopy and Dynamics)は、過渡吸収分光法(transient absorption spectroscopy)を用いてCdSe量子ドットのオージェ再結合を観察し、メタマテリアルのナノ構造を通じてこの過程を制御できることを示した。オージェ再結合が励起子の遷移双極子モーメント(transition dipole moment)に強く依存することから、研究チームは、量子ドットの遷移双極子とナノ構造により形成されるイメージの相互作用により、正味の(net)遷移双極子モーメントの振幅を減らし、オージェ再結合を抑制できることを明らかにした。
研究チームは、複雑な分子技術を用いず、外部の構造を組み合わせるだけで正味の遷移双極子モーメントの振幅を減らし、オージェ再結合を抑制する基本的メカニズムを初めて明らかにしたと強調した。この研究成果は、量子ドットを用いた将来のデバイスの効率性改善に重要な影響をもたらすと期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部