2022年03月
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煙や排ガスが電源へ...3Dプリント使用、新たな熱電技術開発 韓国・蔚山科学技術大学校

韓国の研究者らは、排熱を電気に変換できる管の設計に役立てようと、3Dプリントを使用して熱電インクを開発した。

AsianScientist -工場の有害な煙と車の排気ガスが近いうちに電源として使われるかもしれない。韓国の研究者らは、3Dプリント技術を使用して、排熱を電気に変換できる高性能の熱電管を開発した。この研究は、Advanced Energy Materials 誌に発表された。

産業のほとんどは、今でも電気を生成するために化石燃料を燃焼させている。世界のエネルギー需要の中で化石燃料を供給源としているものは80%もある。その際、かなりの量の熱エネルギーが発生する。また、自動車の燃焼エンジンは汚れた燃料を燃焼させて機械的な動力を生成し、車の排気管から高温ガスを放出する。

新たな熱電技術は、そのような熱をうまく利用し、汚染廃棄物を電気エネルギーに変換できるかもしれない。しかしながら、従来の熱電デバイスは大量生産によって製造されているため、設計の柔軟性が制限される。

一般に、従来の熱源デバイスは長方形の形状であることが多いため、車の排気管や工場の煙突などといった既存の管状のシステムにはうまく収まらない。形状が一致しないために熱を伝達する接触面積を最大化できず、電力生成は非効率的なものとなる。さらに、デバイスを管状にしても、多くの場合は排気管との収まりをよくすることのみを目的とするので、材料が重くなるというだけになる。

研究者らは、電力を発生させる管を正確に作成できる3Dプリント技術を研究してきた。その目的のために、韓国の蔚山科学技術大学校のチャエ・ハンギ (Chae Han Gi) 教授は、研究チームを率い、金属である鉛とテルルを含む熱電インクを開発し、インクの粘弾性(粘性と弾性の両方の特性を持つ)を向上させる改良を行った。

この改良のおかげで、組み立てられたデバイスは安定し、望んでいた管状に簡単に成形できるようになり、工学的加工で他の材料を追加する必要がなくなった。

この研究では、研究者が管の構造をデバイスに一致させた場合、3Dプリントされた熱電管は従来のデバイスよりも効率的に熱を集めることができた。この技術は熱を直接収集して伝達する。400〜800度ケルビン(自動車の排気ガスと産業廃棄物の熱の温度範囲)で試験したところ、一般的なデバイスのほぼ3倍の発電量を示した。

熱電インクと3Dプリントによって設計は柔軟性を持ち、費用対効果が高く、高性能で、カスタマイズ可能な発電機製造が見込める。研究者たちは、防食塗料を統合させるなどしてさらに開発を進め、この技術が最終的に産業応用にレベルアップできるよう望んでいる。

チャエ教授は「熱電材料の製造に3Dプリント技術を使用すれば、従来の材料の限界を克服することができる」と話している。

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