韓国の漢陽大学校(Hanyang University)は2月7日、同校の研究者が、温室効果ガスである亜酸化窒素(nitrous oxide: N2O)を還元するための高性能な電極触媒(electrocatalyst)を開発したと発表した。この研究の成果は学術誌 ACS Catalysis に掲載され、表紙画像に選ばれた。
N2Oは地球温暖化係数(Global Warming Potential)でメタンと二酸化炭素(CO2)の300倍以上という高い温室効果を持ち、自然分解されるまで100年以上もかかる。
漢陽大学校のキム・キョンハク(Kim Kyung-hak)教授は、ソウル大学校(Seoul National University)、浦項工科大学校(POSTECH)の研究チームと共同でN2Oを分解する新たな触媒の開発に取り組んだ。
N2O還元の触媒として用いられるパラジウム(Pd)の表面に張力(tensile force)を加えると性能が向上するが、効率的に張力を加えるための条件を作り出すには、特別な設備や運用コストが必要となる。
キム教授は、原子半径がパラジウムよりも大きい金(Au)を材料に用いることでこの問題に対処し、金ナノ粒子の表面をパラジウムの原子層で覆った「コアシェル(core-shell)」を考案した。さらに、パラジウムのシェル部分の厚みを最適化し、外部のエネルギーを使用せずにパラジウムに張力を加えることで、活性と安定性の高い触媒を実現した。
開発された触媒は、既存の触媒と比較して大幅に高いN2Oの分解能力を示した。さらに、性能試験を1,000回行った後でも既存の触媒より30%高い安定性を示した。
キム教授は「この研究の成果を直接地球温暖化問題の解決に利用できるだけでなく、理論・実験・実証(theory-experiment-demonstration)による研究手法を、金属ナノ粒子を用いたさまざまな触媒の設計に応用できる可能性がある」 と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部