2022年04月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2022年04月

深層学習と表面増強ラマン分光法を組み合わせ、細菌を同定する技術開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は3月4日、同院の研究チームが、表面増強ラマン分光法(surface-enhanced Raman spectroscopy: SERS)と人工知能(AI)手法の深層学習を組み合わせ、細菌の同定を高精度かつ短時間で行うための技術を開発したと発表した。この研究の成果は学術誌 Biosensors and Bioelectronics の4月号に掲載され、印刷版の発行に先立ってオンラインで公開された。

細菌の同定には数時間以上を要する場合があり、感染症の診断や適切な治療選択の際の貴重な時間が削られる。今回の研究では、細菌の分子成分ごとに固有の「指紋」スペクトルを同定できるよう深層学習アルゴリズムを訓練することで、異なる培地に存在するさまざまな種類の細菌を、最大98%の正確度で分類することに成功した。

(提供:KAIST)

信号の増幅を助ける貴金属ナノ構造の上に試料を配置するSERS法では、周囲の培地の信号やノイズにより細菌の明確なスペクトルを得ることが難しく、細菌の分離が必要となる。

研究チームは独自に開発した「dual-branch wide-kernel network(DualWKNet)」というモデルを用いて、スペクトルの特徴間の相関を効果的に学習させることで、「培地からの干渉する信号やノイズがあったにもかかわらず、高い正確度で、細菌の種類と存在する培地を分類することに成功した」 と、研究チームを率いたチョ・スンホ(Jo Sungho)教授は語る。「DualWKNetの使用により細菌と培地を分離する手順を省くことができ、分析時間を劇的に短縮できる」とも。

チョ教授は「このプラットフォームの用途を拡大し、血液を含む他の培地上の細菌の検出にも利用できるようにしたい 」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る