2022年04月
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脳信号で腕の動きの方向を予測できるシステム開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は3月18日、同院の脳科学者らが、脳の神経信号を解読して人が物を掴む動作の方向を予測できるシステムを開発したと発表した。この技術はブレイン・マシン・インターフェース(brain-machine interface:BMI)を介したロボットアームの操作に利用できる可能性がある。この研究の成果は学術誌 Applied Soft Computing に掲載されている。

BMIは脳からの神経信号を機械への命令に変え、コンピューターやロボットアームを操作できる装置である。BMIで神経信号の測定に用いられる皮質脳波記録法(electrocorticography:ECoG)は、「主にてんかん発作の発生源を見つけるために用いられるため、電極が患者ごとに異なる位置に置かれ、感覚・運動信号を検出するのに最適な脳の領域に配置されないことがある」と、KAISTの脳科学者ジョン・ジェスン(Jeong Jaeseung)教授は語る。

(提供:KAIST)

ジョン教授の研究チームは、こうした問題の克服を目指し、echo-state network という機械学習システムと、ガウス分布確率モデルを用いて、腕の動作中のECoG神経信号を解読するための新たなシステムを開発した。

この研究では、てんかんを有する4名の参加者を対象に、手を伸ばして物を掴む(reach-and-grasp)動作中のECoG信号を記録した。参加者は手首と指にモーションセンサーを装着して、本物のテニスボールと仮想現実(VR)映像に対してこの動作を行った後、頭の中で手を伸ばす動作を想像するよう指示された。

上記の動作中のECoG電極からの信号を計測してシステムの予測性能を検証したところ、このシステムは実際の動作と想像上の動作の両方で、腕の動作を3次元空間の24の方向に分類することに成功した。さらにチームは、コンピューターシミュレーションにより、このシステムがロボットアームを操作できることを示した。

この結果は、このシステムがECoG信号を用いて意図された動作の方向を解読できることを示唆している。将来的にはこの技術を用いて、運動障害や感覚障害を持つ人々がリアルタイムで使用できるBMIを実現できる可能性がある。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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