韓国の漢陽大学校(Hanyang University)の研究チームは企業と共同で、炭化モリブデン(molybdenum carbide)を用いた半導体の配線材料と成膜工程を開発した。3月29日付発表。この研究の成果は学術誌 Chemistry of Materials の3月号に掲載され、表紙にも採用された。
現在、半導体の金属配線に多く用いられている銅とタングステンは半導体素子の微細化に伴って電気伝導性が大きく低下する問題があり、これらに代わる新たな配線材料が研究されている。モリブデンやモリブデン化合物は、抵抗が小さく熱化学的安定性に優れていることから次世代の配線材料として注目されているが、その形成に用いる前駆体(precursor)がなく、大量生産が困難であった。
化合物製造企業「iChems」 はこうした問題の解決に向け、従来の前駆体と比べて揮発性が高く、ハロゲン元素を含まないため大量生産しやすい金属-有機前駆体を開発した。
アン・ジフン(Ahn Ji-hoon)教授の研究チームはこの前駆体を用い、厚さ1ナノメートル(nm)、抵抗率わずか10~20マイクロオームセンチメートル(μΩ·cm)の薄膜を用いた、原子層堆積法(atomic layer deposition)による成膜工程を開発した。
論文の筆頭著者である材料科学・化学工学科(Department of Materials Science and Chemical Engineering)博士課程のハ・ミンジ(Ha Min-ji)氏は、「この研究は5 nm以下の薄さでも非常に低い抵抗率を維持する炭化モリブデン薄膜の成膜工程を実行した点で意味があり、熱・化学安定性の評価を通じた次世代半導体配線への利用可能性を示唆している」 と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部