韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は5月17日、同校と漢陽大学校(Hanyang University)の共同研究チームが、物理ドメインの知識と人工知能(AI)を統合することで、リチウムイオンバッテリーの容量の予測精度を向上させることに成功したと発表した。研究成果は学術誌 Applied Energy に掲載された。
電気自動車(EV)ではバッテリーの電池切れや寿命への到達が重大な事故につながる可能性があるため、バッテリーの容量と寿命を正確に予測することは非常に重要である。
バッテリーの容量を予測する方法には物理ベースのモデルとAIモデルの2つがある。従来のAIモデルは訓練に大量のデータを必要とし、訓練されていないデータに対する予測の正解率が低いという問題があった。
(提供:POSTECH)
今回、研究チームは、より少ない訓練データを用いてバッテリー容量を効率よく予測するため、従来の手法と異なる特徴抽出(feature extraction)手法と物理ドメインの知識に基づくニューラルネットワークを組み合わせた。結果、さまざまな容量と寿命分布を持つバッテリーに対する予測の正解率が最大20%改善し、さらにこれらの結果の一貫性も確認された。この結果は、物理ドメインの知識をベースとする信頼性の高いAIをさまざまな産業に応用するための基礎になると期待されている。
研究チームを率いたイ・スンチョル(Lee Seungchul)教授は、「データベースのAIの限界が、物理知識を用いることで克服された。また独自の特徴抽出技術の開発により、ビッグデータ構築の困難さも緩和された」と、今回の研究の意義を語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部