韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は7月5日、ロ・ジュンスク(Rho Junsuk)教授らが率いる研究チームが、ナノ製造技術を用いた高効率なメタホログラムの作製技術を開発したと発表した。研究成果は光学関連の学術誌 Laser & Photonics Review に掲載された。
ポップグループ「ABBA(アバ)」のコンサートでも使用されたホログラム技術は、現実に存在しないもののイメージを再現できるとして注目を集めている。メタマテリアルを用いた「メタホログラム」は、光入射の方向に応じて異なる複数のホログラム画像を同時に作製できる利点を持つが、画質の低さと作製の複雑さにより実用化を阻まれていた。メタホログラムの作製によく用いられる描画技術「電子線リソグラフィ」は多くの時間と費用を要するため効率性が低く、作製されたホログラムは暗い環境でしか見えない。
そこで、ロ教授らはこの問題を克服するため、ナノ複合材料を用いたインクを開発し、メタホログラムを簡単にすばやく印刷できる低コストのプロセスを提示した。この手法は、硬い基板や弾力性のある基板、湾曲した基盤のいずれにもホログラムを印刷できる。また、印刷されたホログラムは明るい場所でも鮮明な画像を表示できる。
(提供:POSTECH)
この手法で作成されたメタホログラムは世界最高水準の約90%(理論上は96.9%、実験上は90.6%)の効率を示した。ロ教授は、「さまざまな基板へのメタホログラムの印刷に成功したことにより、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)への利用可能性が広がった」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部