韓国科学技術院(KAIST)の研究者が国内外の研究者とともに、非常に薄いファンデルワールス結晶内で圧縮された光波を導くための新たなプラットフォームを提示した。7月13日付け発表。この研究の成果は同日付けで学術誌 Science Advances に掲載された。
フォノン-ポラリトンは、極性を帯びた誘電体内のイオンの集団振動と電磁波が結合した状態である。最近、ファンデルワールス結晶を導電性の高い金属の上に置くことで、結晶内のフォノン-ポラリトンをさらに圧縮できることが分かった。この高度に圧縮された「イメージフォノン-ポラリトン(image phonon-polariton)」は、光と物質の強力な相互作用を生じさせるが、基板の粗さに非常に敏感であることが、実用化の妨げとなっていた。
金の単結晶基板(gold crystal)に置かれた六方晶窒化ホウ素(h-BN)
(提供:KAIST)
ジャン・ミンソク(Jang Min Seok)教授が率いる研究チームは、高感度の走査型近接場光学顕微鏡(scanning near-field optical microscope: SNOM)を用いて、金の単結晶基板に置いた厚さ63ナノメートルの六方晶窒化ホウ素(h-BN)中を伝播する双曲型(hyperbolic)イメージフォノン-ポラリトンの光場を直接測定した。また、ファンデルワールス結晶のフォノン-ポラリトンを、寿命を犠牲にすることなく大幅に圧縮できることを示した。h-BNの基板として用いた、原子的に滑らかな表面を持つ独自開発の金結晶が、伝播における損失を抑える鍵となった。
ジャン教授はこの研究について「イメージポラリトン、特にイメージフォノン-ポラリトンの利点を証明した。これらの光学モードは、損失の少ない伝播と光と物質の強力な相互作用を必要とする将来の光電子素子で利用できる可能性がある」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部