韓国の基礎科学研究院(IBS)の研究者らが、史上最小の半導体ナノクラスターを合成し、その構造を明らかにした。7月26日付け発表。この研究の成果は学術誌 Chem に掲載された。
あらゆる科学分野において、材料の原子レベルの構造を知ることは、その材料の性質や機能を関連付けるうえで極めて重要である。量子ドット等のコロイド状半導体ナノ結晶は、ディスプレイや光触媒の分野で注目されているが、その形成と成長に関する分子レベルの機構はこれまで十分に解明されていなかった。特に、半導体ナノ結晶の典型的な核となるナノクラスター、「マジックサイズナノクラスター(magic-sized nanocluster)」の構造を決定することは、不安定性や不均一性の問題により困難であった。
今回、IBSの研究者らは、中国の厦門大学(Xiamen University)、カナダのトロント大学(University of Toronto)の研究チームと共同でこの課題に挑んだ。チームは27個の原子からなる1ナノメートルサイズ以下のセレン化カドミウムのナノクラスター(Cd14Se13)を合成し、このナノクラスターが、核となる原子をかご状の分子が包み込んだ構造(core-cage structure)になっていることを明らかにした。
(提供:IBS)
不均一性の克服に関して、研究を率いたヒョン・テクファン(Hyeon Taeghwan)教授は、「三級ジアミン(tertiary diamine)とハロカーボン(halocarbon)の溶媒が、大きさがほぼ一定の化学量論的なクラスターを得るうえで重要な役割を果たしていることが分かった」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部