韓国科学技術院(KAIST)は8月5日、同院の研究チームが、炎症性副作用を生じさせずにアルツハイマー病(AD)の原因となるアミロイドβ(Aβ)タンパク質を除去する画期的なアルツハイマー病治療薬を開発したと発表した。研究成果は8月4日付けで学術誌 Nature Medicine に掲載された。
最近、アミロイドβタンパク質を標的とするモノクローナル抗体が、アミロイドβタンパク質のプラークを減少させる効果に基づき、アルツハイマー病治療薬として初めて米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた。しかし投与を受けた患者の約40%で脳浮腫(ARIA-E)や出血(ARIA-H)といった重篤な副作用が生じている。これらの炎症性副作用は、アミロイドβタンパク質抗体が免疫細胞のFc受容体に結合する際に脳内で生じる炎症反応に関連していると考えられ、神経細胞の死やシナプスの消失を引き起こす可能性がある。
KAISTの研究チームは、従来の抗体を用いた免疫療法とは全く異なる機序でアミロイドβタンパク質(Aβ)を除去する、アダプタータンパク質Gas6を用いた融合タンパク質「αAβ-Gas6」を開発した。αAβ-Gas6はアルツハイマー病のマウスモデルを用いた実験で効果的にアミロイドβタンパク質を除去しただけでなく、アミロイドβタンパク質(抗体療法で生じる炎症性副作用を回避できることを示した。
論文を執筆したキム・チャンヒュク(Kim Chan Hyuk)准教授とチョン・ウォンスク(Chung Won-Suk)准教授は「このアプローチは炎症性副作用とシナプスの消失を引き起こさずにADを治療するための突破口となる」と語った。
(提供:いずれもKAIST)
両教授は今後、自身らが設立した企業「イリミス・セラピューティクス(Illimis Therapeutics)」を通じて、アルツハイマー病治療のためのさまざまなGas6融合タンパク質の開発に取り組むとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部