韓国の浦項工科大学校(POSTECH)の研究チームが、連続的な触媒反応を精密に制御できる、磁性材料とプラズモンを組み合わせた二元触媒(dual-catalyst)システムを開発した。9月7日付け発表。研究成果は学術誌 Nano Letters の8月号に掲載され、表紙絵(supplementary cover)にも採用された。
2つ以上の触媒を組み合わせたナノ反応器は、連続的な触媒反応を生じさせることができるため、化学物質の精密な合成に役立つ。しかし、合成の各段階が互いに影響し合うため、反応の複数の段階を制御することや副反応を抑制することが困難になる。
チームはこの課題を克服するため、磁性材料のコア(核)とプラズモンのシェル(殻)で構成されるマルチモジュール型のナノ反応器を開発した。磁性材料は磁界の影響下で、プラズモンは近赤外光を受けて、それぞれ触媒を選択的に活性化する結果、外部から熱を加えられなくとも選択的に熱エネルギーを生成できる。さらに、さまざまな触媒による干渉を最小限に抑えられるため、生物に有害な影響や副反応を生じさせない。
磁場と近赤外用いてこのナノ反応器を遠隔制御した結果、単純な前駆体から付加価値の高いシンナムアルデヒドが95%の収率で生成された。
研究を率いたイ・インス(Lee In Su)教授は「このナノ反応器を用いることで、これまで体内で合成できなかった複雑な薬物を合成することが可能になる。さらにこの技術は診断と治療を同時に行うセラノスティクス(theranostics)の領域にも応用できる」と期待を表明した。
(提供:いずれもPOSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部