韓国の高麗大学校(Korea University)は、同大学の研究チームが、リチウムイオン二次電池の負極として、遷移金属酸化物をベースとしたバインダーを使用しない(バインダーフリー)電極を合成する新たな技術を開発したと発表した。研究成果は9月21日付けで学術誌 ACS Nano に掲載された。
次世代負極として注目されるバインダーフリー電極では理論容量の大きい遷移金属酸化物が活性材料として用いられるが、これらの材料には、導電率の低さや充放電サイクルに伴う膨張といった改善すべき特性がある。しかし、既存のプロセスでバインダーフリー電極を合成した場合、活性材料の物理化学的特性を精密に制御することは非常に難しい。
そこでチョ・ウォンジュン(Choi Won-joon)教授が率いる研究チームは、電熱波(Electrothermal wave)を用いて、ニッケルの3次元発泡体(3D foam)上にコバルト酸化物のナノアレイを合成し、数秒間で電極材料を作製する技術を開発した。
この電極は、従来の手法で合成した電極に比べて粒界密度(grain boundary)が高く、酸素空孔(oxygen vacancy)が少ない。この材料を用いたバッテリーは、容量が大幅に改善し、コバルト酸化物の不規則な膨張が防がれるため電池寿命も延びることがわかった。今回の研究の成果は、高容量のリチウムイオン電池の開発に向けた新たな設計戦略を提示している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部