2022年10月
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頭蓋骨を「透かして」脳を観察できるホログラフィック顕微鏡を開発 韓国

韓国の基礎科学研究院(IBS)は、同院と韓国カトリック大学校(Catholic University of Korea)、ソウル大学校(Seoul National University)の研究者らが、マウスの頭蓋骨を傷つけずに脳の神経回路網を3次元的に画像化できる新たなホログラフィック顕微鏡を開発したと発表した。この研究の成果は7月28日付けで学術誌 Science Advances のオンライン版に掲載された。

ホログラフィック顕微鏡

光を用いて生体の深部組織を観察する場合、光が組織内を進む際に発生する強い多重散乱(multiple scattering)により鮮明な画像を取得することが困難になる。高解像度の深部組織画像を得るには、多重散乱波を除去し、単一散乱波の割合を増やすことが重要になる。

IBSの研究者らは2019年に、多重散乱を除去できる高速時間分解ホログラフィック顕微鏡を用いて、切開を行わずに生きた魚の脳の神経回路網を観察することに成功していた。

今回、研究チームは、光と物質の相互作用を定量的に分析することでこの顕微鏡を改良し、魚よりも頭蓋骨が厚いマウスの脳の神経回路網の高解像度画像を取得することに成功した。この技術は、頭蓋骨を切り取る手術も蛍光標識も必要としない。

入射角による反射信号の特性

研究を率いたIBSの分子分光学・動力学センター(Center for Molecular Spectroscopy and Dynamics)のチョ・ウォンシク(Choi Wonshik)副所長は「今回の成果は、神経科学や精密計測学(precision metrology)を含む学際的な生物医学研究の発展に貢献すると期待している」と語った。

頭蓋骨を取り除かずに生きたマウスの脳内のニューラルネットワークが観察された
(提供:いずれもIBS)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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