韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は、同大学と蔚山科学技術大学校(UNIST)の共同研究チームが、負極材料を用いない(アノードフリー)リチウム二次電池により、エネルギー密度を大幅に向上させたと発表した。9月30日付け。研究成果は学術誌 Advanced Functional Materials に掲載された。
この二次電池は体積エネルギー密度が977ワット時毎リットル(Wh/L)と従来のリチウム二次電池より40%高く、1回の充電で電気自動車(EV)を630キロメートル走行させることができる。
(提供:POSTECH)
アノードフリー電池は、リチウム二次電池のエネルギー密度を向上させる技術として有望視されているが、負極内にリチウムの安定した保存場所がないため、体積膨張が生じ、電池のライフサイクルが短くなる課題があった。
この課題を克服するため、チームは一般に使用されている炭酸ベースの電解液を用い、イオン導電性の基質を追加した。この基質は負極保護層を形成することに加え、負極の膨張を最小限に抑える役割を果たす。また、この研究は、硫銀ゲルマニウム鉱(Argyrodite)と硫化物をベースとする固体電界質を用いた固体半電池(solid- state half-cell)の実証に成功した点で注目を集めている。この技術は、爆発のおそれのないリチウム二次電池の商用化につながる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部