韓国の漢陽大学校(Hanyang University)は、同校のチョ・ジュンミュン(Choi Joon-myung)教授が、韓国産業技術研究院(KITECH)との共同研究により、海で発生する振動を用いて効率的にエネルギーを生産できる環境発電機(energy harvester)を開発したと発表した。
災害を予測するためのモニタリングにおいて、海洋内等の人間が容易に近付けない場所では、バッテリーの充電や交換が不要な自己発電型のモニタリング装置が有用となる。
今回開発した環境発電機は、風や波、海流で発生する1ヘルツ以下の振動を用いて電気エネルギーを生産でき、体積あたりの出力で世界最高性能(0.1~1ヘルツの振動で1.6~10.45メガワット/立方センチメートル)を達成した。また、海中で長時間安定して発電できる耐久性を示した。
この技術の秘訣は、コイル状に巻いたカーボンナノチューブ(coiled carbon nanotube:CNT)の綿密な設計と独自の作製手法にある。研究チームは、CNTを縦方向に配置してねじる「L-twist」という新たなプロセスを用いて、機械的エネルギーから電気エネルギーへの変換に優れたCNTの糸(ヤーン)を作製した。
チョ教授は、「この研究は、海洋内調査での半永久的なモニタリングを可能にする点で意義がある」と語る。また、KITECHのキム・シヒョン(Kim Shi-hyeong)氏はこのヤーンについて「機械的・化学的安定性に優れているため、海洋中だけでなく大気中でも使用できる」と述べ、より幅広い用途への応用の可能性を示唆した。
2022年11月11日付け発表。研究成果は同年9月18日付けで学術誌 Advanced Science に掲載された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部