韓国の基礎科学研究院(IBS)は、同院の研究チームが、開放量子系の理論における基本的な仮定を克服する方法を導き出したと発表した。
(提供:IBS)
孤立量子系における相関する量子状態は新たな量子技術に不可欠な役割を果たしており、2022年のノーベル物理学賞を受賞した研究とも関連している。しかし、開放量子系では、対象の系と熱浴(reservoir)の相関はボルン近似(Born approximation)の下で無視される。
この制限的な仮定を克服するための試みはこれまでもなされてきたが、厳密な理論が不足していた。IBS複雑系理論物理学センター(Center for Theoretical Physics of Complex Systems)のジュザー・ティグナ(Juzar Thingna)博士が率いる研究チームは、系と熱浴の間の相関が時間と共に構築されることを考慮に入れ、長時間の相関を統計力学による記述通りに正しく説明するアプローチを提示した。
このアプローチに基づき創出された「カノニカルに一貫した量子マスター方程式(canonically consistent quantum master equation:CCQME)」は、ボルン近似に基づくアプローチでしばしば生じる反物理学的な負の確率に関する課題を大きく改善する。
この理論は、系-熱浴相関の存在下における非平衡(nonequilibrium)物理学を再検討する方法を築き、開放量子系、量子輸送、量子熱力学の分野に影響をもたらすと考えられている。
2022年12月9日付け発表。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部