韓国の基礎科学研究院(IBS)は1月27日、同院のソフトマター・生体センター(CSLM)の研究チームが、古典的な系(classical system)において室温で準粒子(quasiparticles)を観察したと発表した。研究成果は学術誌 Nature Physics に掲載された。
「粒子のようにふるまう長寿命の励起」を指す準粒子の概念は、超伝導や超流動等のさまざまな物理環境における創発集団現象(emergent collective phenomena)の理解に役立ってきた。よく知られた準粒子の例には超伝導状態におけるクーパー対やグラフェン中のディラック粒子がある。しかし、これまで準粒子の観察と利用は量子物理学の分野に限定されてきた。
今回の研究は、このような常識に異論を投げかけた。研究チームは、マイクロ流路内で粘性流動により動かされた粒子から成る2次元結晶を観察した。流体力によって結合されたこれらの粒子は安定な対を形成する。これは古典的な準粒子の初めての例であり、量子系と古典的な散逸系との深いつながりを明らかにするものである。
「この研究成果は、基礎的な量子物質の概念、特に準粒子と平坦バンド(flat band)が、古典的散逸系の多体物理学を理解する助けになりうることを初めて示した」と責任著者のツヴィ・トゥルスティ(Tsvi Tlusty)氏は語る。
もう一人の責任著者であるパク・ヒョク・キュ(Pak Hyuk Kyu)氏は、「これらの知見は、これまで量子系でのみ測定されてきたほかの創発集団現象が、アクティブマターや生体物質等のさまざまな古典的散逸環境でも発見される可能性があることを示唆している」と話した。
(提供:いずれもIBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部