韓国の基礎科学研究院(IBS)は2月17日、同院の科学者らから成る国際共同チームが、世界の気温上昇を産業革命前から1.8℃未満に安定させなければ、西南極とグリーンランドの氷床の不可逆的な消失と海面上昇の急加速が間もなく生じる可能性があることを示したと発表した。研究成果は学術誌 Nature Communications に掲載された。
融解する氷床は海面上昇の最大の要因になりうるが、その挙動を支配する物理的過程の予測は非常に複雑であることが知られている。さらに、「グリーンランド・西南極氷床の動力学をシミュレーションするコンピューターモデルは、融解する氷床が海洋プロセスに影響を与え、今度はその海洋プロセスが氷床と大気にフィードバックするという事実を計算していない」と、論文の筆頭著者であるIBS気候物理学センター(Center for Climate Physics)および釜山大学校(Pusan National University)の博士課程学生パク・ジュンヨン(Park Jun Young)氏は語る。
同研究チームは、氷床、氷山、海洋、大気の結合(coupling)を取り入れた新たなコンピューターモデルを使用した計算により、氷床と海面の相互作用による暴走効果(run-away effect)を予防するには、2060年までに世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロ(net zero)にする必要があることを示した。
同研究は、さまざまな気候の構成要素とそれらの相互作用を取り入れた、より複合的な地球システムモデルを開発することの必要性を強調している。
南極とグリーンランドの氷床による海面上昇の寄与、およびさまざまな温室効果ガス排出シナリオに従った 2150 CE 南極氷床表面の予測マップ
© Jun-Young Park
(提供:IBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部