韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は3月2日、化学科(Department of Chemistry)のキム・ウォンジョン(Kim Won Jong)教授が率いる研究チームが、圧電ナノ粒子を用いて電極を埋め込まずに脳に電気刺激を与える方法を開発したと発表した。研究成果は学術誌 Nature Biomedical Engineering (オンライン版)に掲載された。
体内に埋め込んだ電極を通じて神経細胞を活性化する脳深部刺激療法(deep brain stimulation)は、パーキンソン病等の神経変性疾患の治療法として注目を集めている。しかし、この方法は副作用や手術による合併症のリスクを伴う。
今回、チームは超音波に反応して一酸化窒素を放出する圧電ナノ粒子を開発した。一酸化窒素により血液脳関門が一時的に壊されてナノ粒子が脳実質に蓄積し、圧電効果により、ドパミンの放出を促す電流が発生する。これらのナノ粒子は、マウスモデルにおいて、毒性を生じさせることなくパーキンソン病の症状を緩和することが観察された。
(提供:POSTECH)
この方法の大きな利点は、高密度焦点式超音波(high-intensity focused ultrasound)をイメージング手段と特定部位に一酸化窒素を放出する手段の両方に用いていることにある。今回の研究成果は脳疾患の非侵襲的な治療アプローチにつながる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部