韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は4月10日、物理学科(Department of Physics)のパク・ギョンドク(Park Kyoung-Duck)教授とク・ヨンジョン(Koo Yeonjeong)教授のチームと、ロシアの国立光学IT機械大学(ITMO)のヴァシリ・クラフツォフ(Vasily Kravtsov)教授率いるチームが、既存のトランジスタの限界に対処する「ナノ励起子トランジスタ(nano-excitonic transistor)」を開発したと発表した。研究の成果は、国際学術誌ACS Nanoに掲載された。
2つの異なる半導体の単分子層を重ねた半導体ヘテロ二重層(semiconductor heterobilayer)には、層内励起子と層間励起子という2種類の励起子があり、それぞれが放出する光信号を選択的に制御することで2ビットの励起子トランジスタを開発することが可能になる。研究チームは、励起子に直接触れることなく励起子の密度と発光効率をリモートで制御することに初めて成功した。この方法の最大の利点は、半導体材料への物理的ダメージを最小限に抑えながら励起子を可逆的に制御できることである。また、「光」を利用したナノ励起子トランジスタは、熱エネルギーの損失を最小限に抑えつつ、大量のデータの高速処理を可能にする。
(出典:いずれもPOSTECH)
ク教授は、「ナノ励起子トランジスタは、光学コンピューターの実現に不可欠な役割を果たすことが期待され、AI技術による膨大なデータの処理に役立つだろう」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部