2023年05月
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アルツハイマー病の診断と治療へ画期的発見 韓国

韓国の基礎科学研究院(IBS)は4月17日、同院の研究チームがアルツハイマー病の診断と治療に革新をもたらす可能性がある新たな発見をしたと発表した。研究チームは、脳内のアストロサイトが高濃度の酢酸を取り込み、有害な反応性アストロサイトに変化するメカニズムを実証し、さらにこのメカニズムを利用して、アストロサイトとニューロンの相互作用を直接観察する新しいイメージング技術を開発した。この研究の成果は、4月17日付のBrainに掲載された。

従来の神経科学では、アルツハイマー病(AD)の原因はアミロイドベータ(Aβ)プラークにあるとされている。しかし、同院の認知・社会性センター(CCS)のジャスティン・リー(Justin Lee)所長は、反応性アストロサイトがアルツハイマー病の真の原因であるという新しい説を支持しており、これまでに反応性アストロサイトとその中のモノアミン酸化酵素B(MAO-B)がADの治療標的として利用できることを報告している。

今回の研究において、リー所長のチームは、放射性酢酸(11C-酢酸)とグルコースプローブ(18F-FDG)を用いたポジトロン放射断層撮影(PET)により、AD患者の神経細胞代謝の変化を可視化した。この新しいイメージング戦略を用いることで、研究グループは、酢酸及びグルコース代謝の変化がADマウスモデルおよびヒトAD患者において一貫して観察されることを発見した。また、患者の認知機能と、11C-酢酸及び18F-FDGのPET信号との間に強い相関性があることを確認することに成功した。

論文の筆頭著者の1人であるナム・ミンホ(Nam Min-Ho)博士は、「この研究は、ADの主な原因として最近注目されている反応性アストロサイトを直接可視化することにより、学術的、臨床的に大きな価値を証明している」と述べた。

マイトクリプタイド-1 (MCT-1) によって媒介される酢酸取り込みは、アストロサイトにおけるアミロイドベータ (Aβ) 誘導 GABA の放出を促進する

アデノウイルスモデル (反応性アストログリオーシスモデル) における 11C-アセテート および 18F-FDG のマイクロPETの画像

AD患者の脳における反応性アストログリオーシスとニューロンのグルコース代謝低下を可視化するための 11C-アセテート および 18F-FDG の画像
(出典:いずれもIBS)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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