2023年06月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2023年06月

世界初、メタレンズの大量生産に成功 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は5月9日、機械工学・化学工学部(Department of Mechanical Engineering and Department of Chemical Engineering)のロ・ジュンスク(Rho Junsuk)教授らが率いる研究チームが世界で初めて、メタレンズの大量生産に成功したと発表した。研究成果は、Nature Materials誌に掲載された。

近年、科学界の注目を集めている新しい光学デバイスであるメタレンズの製造には高精度な技術が必要であり、コストもかかるため、製造規模の拡大が課題となっている。

ロ教授のほか、高麗大学校(Korea University)と産業科学技術研究所(RIST)の研究者らからなるこのチームは、半導体とディスプレイの製造に使われる2つの技術、フォトリソグラフィとナノインプリントリソグラフィを組み合わせることで、メタレンズの製造プロセスの制限を克服した。従来のナノインプリント技術を用いたナノスケール構造では、屈折率が低いために効率が約10%と非常に低く、効率を上げるのに多大なコストが必要だった。

研究チームは、約20ナノメートルの非常に薄い二酸化チタン(TiO2)の層でレンズをコーティングすることでレンズの効率を90%にまで向上させることに成功した。これにより、シンプルなプロセスで高性能のメタレンズを大量生産することが可能になった。

(出典:POSTECH)

研究チームはさらに、軽量なVRデバイスを製作することで、メタレンズの実用性を実証した。この研究は、メタレンズの商業化に一歩近付くものであり、ポスコが出資するPOSCO-POSTECH-RIST Convergence Research Instituteの第1弾プロジェクトに選ばれている。メタレンズの大量生産の成功は、その商業化を加速し、鉄鋼メーカーから未来志向の素材企業への転換を図るポスコに大きな機会をもたらすことになる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る