韓国の漢陽大学校(Hanyang University)は、数学科(Department of Mathematics)のキム・ミラン(Kim Mi-ran)教授率いる研究チームが、準同型暗号を高速化する技術を開発したと発表した。5月22日付け。この研究は、「第29回サムスン・ヒューマンテック論文賞(29th Samsung Humantech Paper Awards)」のコンピューター科学・工学部門で銀賞を受賞した。
準同型暗号は、暗号化したまま算術演算や多項式計算を行うことを可能にする暗号手法で、元のデータが露出することがないため、セキュリティ問題を解決する次世代の暗号技術とみなされている。
2017年にキム教授のチームが開発した準同型暗号は、統計解析やデータ検索、機械学習等の様々な分野で活用されており、世界的に注目を集めている。しかし、この方式は乗算演算が複雑で速度が遅いため、商業化が難しいという課題があった。
この問題を解決するため、研究チームは、大きな暗号文を比較的小さな要素に分解し、変換した暗号文に対して、基本的な準同型暗号演算を比較的高速な演算で表現した。これにより、演算速度を大幅に向上することに成功した。
この技術は、既存のあらゆる準同型暗号方式に適用できる。また、ハードウェアベースで実装しやすい演算で表現できるため、ハードウェア・アクセラレーターを用いた準同型暗号研究の新たな地平を切り開くことが期待される。
キム教授は、「準同型暗号の高速化技術により、ビッグデータ分析、自律走行車、IoT等、様々な用途が現実のものになることが期待される」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部