韓国の成均館大学校(SKKU)は6月9日、統合生命工学科(Department of Integrative Biotechnology)のキム・ヒクォン(Kim Hui Kwon)教授率いる研究チームが「プライムエディタ(Prime Editor)」と呼ばれる次世代ゲノム編集ツールを設計するための人工知能(AI)モデルの開発に成功したと発表した。研究の成果は、科学誌Cellに掲載された。
ゲノム編集技術のプライム編集(Prime editing)は、二本鎖DNA切断(DNA double strand break:DSB)を必要とせずに標的DNA部位に新たなゲノム情報を導入することを可能にする画期的な技術であり、従来のゲノム編集法に比べて格段に安全で効率的であると考えられている。しかし、プライム編集のプロセスは複雑であり、プライム編集の効率を決定する重要な役割を果たすプライム編集ガイドRNA(prime editing guide RNA:pegRNA)の設計には幅広い選択肢があるため、その応用は課題が多い。
こうした課題に対処するため、SKKUのキム教授と延世大学校(YU)医学部のキム・ヒョンボム・ヘンリー(Kim Hyongbum Henry)教授の共同チームは、約3年間にわたり33万以上のpegRNAによって誘導されたプライム編集の効率に関するデータセットを生成した。この分野で最大規模となるデータセットの系統的解析を通じて、研究チームはプライム編集効率を決定する主要因子の特定に成功した。さらに、pegRNAの効率と精度の予測を可能にするAIモデルを開発することにより、最適なpegRNAを容易に設計できるようになった。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部