韓国の浦項工科大学校(POSTECH)の研究チームが、電子スピンを利用することによって、リチウムイオン電池の容量増大と充電時間の短縮を可能にする新たな負極材料を開発した。6月20日付発表。この研究成果は、Advanced Functional Materialsに表紙論文として掲載された。
電気自動車(EV)に使われるリチウムイオン電池の効率は、負極材料がどれほどリチウムイオンを貯蔵できるかによって決まる。POSTECHの化学工学科(Department of Chemical Engineering)及び鉄・エネルギー材料技術高等研究所(Graduate Institute of Ferrous & Energy Materials Technology)のキム・ウォンベ(Kim Won Bae)教授率いる研究チームは、高度にスピン偏極した電子を利用して、優れたリチウムイオン貯蔵容量と強磁性特性で知られるマンガンフェライトを負極材料として合成する新しい方法を考案した。
(出典:いずれもPOSTECH)
この技術革新により研究チームは、マンガンフェライト負極材料の理論上の容量を50%以上超えることに成功した。また、負極材料の表面積を拡大することで、大量のリチウムイオンの同時移動が可能となった。実験の結果、現在市販されているEVと同等の容量を持つバッテリーをわずか6分で充電できることが確認された。
キム教授は、「電子スピンを利用した表面改質による合理的な設計を適用することで、従来の負極材料の電気化学的限界を克服し、電池容量を増加させる方法について新たな知見を示すことができた」と述べ、この技術がEVバッテリーの耐久性の向上と充電時間の短縮につながるとの考えを示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部