韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は7月20日、同大学の研究チームが最近行ったシミュレーションの結果、大気中の二酸化炭素(CO2)が減少してもエルニーニョ現象の頻度と強度が増大する可能性があることが明らかになったと発表した。研究結果は、Science Advancesに掲載された。
POSTECHの環境科学工学部(Division of Environmental Science and Engineering)および数学科(Department of Mathematics)のグク・ジョンスン(Kug Jong-Seong)教授と環境科学工学部のガヤン・パティラナ(Gayan Pathirana)教授の率いる研究チームは、Community Earth System Modelを用いてシミュレーションを実施した。
その結果、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、エルニーニョ現象の頻度と深刻さが増大することが確認された。興味深いことに、一般的な通念とは対照的に、その後CO2濃度が低下しても、エルニーニョ現象が頻発する可能性があることも明らかになった。こうした結果は、CO2削減政策を取っても、エルニーニョ現象を避けられない可能性があることを示唆している。
(出典:いずれもPOSTECH)
さらにシミュレーションの結果から、エルニーニョの影響を受ける地域では、気候レジームシフトが起こる可能性があることが明らかになった。南米熱帯地域、オーストラリア北西部、南アジアなどの地域では、平均降雨量の減少により砂漠化に直面する一方、温帯の北米・南米、東アジア、熱帯アフリカでは、降雨量が増加する可能性がある。
グク教授は、「異常気象を防ぐための政策を立案する際には、エルニーニョ現象の激化のような現象も十分に考慮に入れなければならない。既に大気中に放出された温室効果ガスの持続的影響を考えると、気候変動の社会的コストとしてこれらの長期的影響を評価することが不可欠である」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部