2023年10月
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充放電状態を色で表す高効率のフレキシブル電池開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)の材料科学・工学科(Department of Materials Science and Engineering)のキム・イルドゥ(Kim Il-Doo)教授と明知大学校(MJU)のユン・テグァン(Yun Tae Gwang)教授が率いる共同研究チームは、色の変化によって充放電状態を視覚的に表すことができる高効率のフレキシブルZnイオン電池を開発した。9月1日付け発表。この研究成果は、Advanced Materialsに掲載され、掲載号のインサイドカバーに採用された。

図1. エレクトロクロミック亜鉛イオン電池。そのアノードは、充電すると濃い青色に変わり、放電すると透明になるポリマーでできている

スマートなウェアラブルデバイス市場の急速な成長に伴い、蓄電機能に加え、電流や電圧をかけると色が可逆的に変化するエレクトロクロミック特性を持つ高性能な蓄電システムは、大きな注目を集めている。しかし、既存のエレクトロミックデバイスは、電気伝導性が低いため、電子とイオンの移動効率が低く、蓄電容量も少ないという欠点があった。

キム教授らの研究チームは、電子とイオンの移動効率を最大化するために、世界初となる「πブリッジスペーサー(π-bridge spacer)」を組み込んだエレクトロクロミックポリマー負極をモデリングし、合成した。π結合は、構造体内部の電子の移動度を向上させてイオンの移動スピードを早め、イオン吸収効率を最大化することができるため、エネルギー貯蔵容量の向上につながる。その結果、急速充電が可能になり、亜鉛イオンの放電容量が従来報告されているより40%向上したほか、充放電時に濃紺から透明に切り替わるエレクトロクロミック機能も30%向上した。

図2. π-πスペーサーを備えたエレクトロクロミックポリマーの構造と、このカソード材料を使用したスマートフレキシブルバッテリーの動作の概略図

図3. (A) 密度汎関数理論 (DFT) 理論に基づく原子および電子構造解析 など
(出典:いずれもKAIST)

キム教授は、「この技術は、既存の電池の概念を超えるものであり、この技術がスマート電池やウェアラブル技術の革新を加速する未来型エネルギー貯蔵システムとして使用されることを期待している」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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