韓国の浦項工科大学校(POSTECH)の化学工学科(Department of Chemical Engineering)のノ・ヨンヨン(Noh Yong-Young)教授ら率いる研究チームが、ペロブスカイトの3種類のカチオンを利用することにより世界トップクラスのペロブスカイト・トランジスタを開発した。9月8日付け発表。この研究成果は、Nature Electronicsに掲載された。
電子回路にはn型半導体とp型半導体の両方が必要だが、多くの半導体材料は電子移動度が正孔移動度を上回ることから、効率的なp型半導体の開発が難しい。韓国政府は、この問題をテクノロジー分野の10大課題の1つと認識している。
研究チームはさまざまな化合物を組み合わせることによって高性能のp型ペロブスカイト半導体材料の開発に取り組んできた。今回の研究では、ペロブスカイトのカチオンのAサイトに、ホルムアミジニウム(FA)、セシウム(Cs)、フェネチルアンモニウム(PEA)という3つのカチオンの混合物を採用した。この3つを組み合わせたのは今回の研究が初めてであり、結果的に、欠陥の少ない高性能のp型ペロブスカイト半導体層の開発に成功した。
この成果に基づき、研究チームは高い正孔移動度(70cm2V-1s-1)とオン/オフ電流比(108)を持つトランジスタを実装し、より少ない消費電力でより高速なコンピューティングを実現した。
(出典:POSTECH)
ノ教授は、「低温プロセスのp型半導体の性能がn型半導体に匹敵するまでに向上すれば、より高速な電子回路を構築し、データ処理速度を大幅に上げることが可能となる。この研究成果が電気・電子工学分野で広く応用されることを期待している」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部