米国科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービス「Eurekalert!」は11月6日、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(MD Anderson Cancer Center)と、韓国の高麗大学校(Korea University)、延世大学校(YU)など5つの研究機関が協力し、胃がんの新しい遺伝的分類を確立したと発表した。この研究成果は、Molecular Cancerに掲載された。
この研究は、MDアンダーソンのイ・ジュソグ(Lee Ju-Seog)教授と、高麗大学校の腫瘍学/血液学科(Division of Oncology/Hematology)のオウ・サンチョル(Oh Sang Cheul)教授が主導した。研究には、韓国のCHA大学校(CHA University)医療センター、慶熙大学校(Kyung Hee University)医学部、成均館大学校(Sungkyunkwan University)医学部も加わった。
胃がんの特徴は、遺伝的・臨床的多様性を有することにある。研究チームは、過去に発表された8つの胃がんの遺伝子分類システムを分析し、6つのコンセンサスゲノムサブタイプ(Consensus Genomic Subtypes:CGS)を導き出した。このシステムでは、異なる遺伝子発現パターンによって胃がんをCGS1からCGS6まで分類した。
分析の結果、各サブタイプはそれぞれ異なる特徴を有していた。たとえば、CGS1は最も予後不良な特徴を示し、幹細胞特性が非常に高く、遺伝子の改変度が低かった。しかし解析の結果、CGS1は免疫療法によく反応し、1GF1Rを標的とした治療が有効であることが確認された。このように、タイプごとに特徴や有効な治療が異なることが明らかになった。
研究チームはさらに、ゲノムとデータの体系的分析を通じて、各サブタイプに対する標準治療と実験的治療の潜在的奏功率を推定した。その結果、CGS3サブタイプは、抗がん放射線療法で特に大きな効果があるなど、各サブタイプに対する潜在的な治療対象が明らかになった。
この研究の主執筆者の1人である高麗大学校のイム・スンヤン(Yim Sung Young)教授は、「この研究が胃がんの個別療法の基礎を築くものになる」との期待を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部