2024年01月
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東アジアの前線性豪雨の強度増加、人間活動による温暖化が影響 韓日米の共同研究

韓国科学技術院(KAIST)の研究チームが率いる韓日米の国際共同研究は、人間によって引き起こされる温暖化が、東アジアにおける夏季モンスーンの前線システム(the East Asia Summer Monsoon frontal system)に与える影響について世界で初めて明らかにした。この研究成果はScience Advancesに掲載された。

ここ数十年、世界各地から夏季豪雨の強度が変化していることが報告されている。一方、東アジアの夏季豪雨は台風やサイクロン、前線などさまざまな形態で生じており、夏の降水量の4割以上を占める前線性豪雨(heavy frontal rain)は、まだ十分に研究されていない。人間活動による温暖化も、前線性豪雨にどの程度影響しているかも分かっていない。

KAISTのほか、韓国の全南大学(CNU)と光州科学技術院(GIST)、日本の東京大学と東京工業大学、米国のユタ州立大学など8つの研究機関で構成される研究チームは、過去60年の観測データを用いて東アジアの前線によって生じる豪雨の強度を確認した。その結果、朝鮮半島と日本で豪雨の強度が約17%増していることが分かった。

さらに、アースメタバース実験(the Earth Metaverse experiment)を用いて、人間の活動に由来する温室効果ガスの排出(greenhouse gas emissions)がある場合とない場合の地球をシミュレーションしたところ、温室効果ガスによって強度が約6%増したことが判明した。

後期 (左、1991~2015年) と初期(右、1958~1982年) で観測された前線降雨強度の違い。アースメタバース実験で分析され、人為的温暖化の影響の可視化された

この研究は、豪雨の強度増加の背景にあるメカニズムも解明した。研究チームは、気候の温暖化による水分移動の増大に、北太平洋西部亜熱帯高気圧(the West North Pacific Subtropical High)と呼ばれる巨大な気象システムの強化が組み合わさることによって、前線降雨が強化されることを発見した。大気の温度が上昇すると、より多くの水分を保持するようになり、条件が整えば豪雨につながる。

研究責任者のキム・ヒュンジュン(Kim Hyungjun)氏は、「真の課題は、こうした異常気象を予測し、それに備えることにある。強度を増した豪雨は、私たちに適応を迫る未来からのメッセージである」と語った。

人新世時代(Anthropocene)のフィンガープリントの変化率の比較。横軸は、人新世時代のフィンガープリント(1958~2015年) の長期変化の傾きで、非温暖化実験(青)と温暖化実験(赤)から抽出された傾きの確率分布を示す。縦の実線は、観測データから抽出された人新世時代のフィンガープリントの傾きを示す

北太平洋西部亜熱帯高気圧の水蒸気の収束と変化率の比較。温暖化実験(赤)と非温暖化実験(青)から抽出した、水蒸気収束の変化の傾き(横軸)と北太平洋西部亜熱帯高気圧の傾き(縦軸)を示す。 1958年から1982 年 (P1) と1991年から2015年 (P2) の期間における2つの指数の傾き変化の分布を示す
(出典:いずれもKAIST)

(2023年12月5日付発表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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