2024年01月
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昼間の人工衛星画像から他国の経済活動を詳細に分析するAI開発 韓国

韓国科学技術院(KAIST)と複数の研究機関のコンピューターサイエンティスト、経済学者、地理学者からなる学際的な共同研究チームが、日中(昼間)の人工衛星画像から経済活動を分析する人工知能(AI)を開発した。このAIは、北朝鮮のような信頼できる統計データの少ない国にも適用できる。この研究成果は、Nature Communicationsに掲載された。

夜間照明の衛星画像 (左上、背景写真は NASA地球観測所提供)に映し出された朝鮮半島。北朝鮮は平壌を除いてほとんど暗く、それに比べ韓国は明るく見える。
対照的に、研究チームが開発したモデル(右上)は、北朝鮮とアジア5カ国のより詳細な経済予測を予測するために昼間の衛星画像を使用している。
上はGoogle Earthの写真
(出典:KAIST)

国連によれば、現在7億人以上が1日の収入が2ドル未満の極度の貧困状態にある。しかし、正確な統計を取っていない国も多く、貧困の正確な評価は世界的な課題となっている。データの不足を補うため、ストリートビューや航空写真、衛星画像といった代替的な情報源を利用して貧困を推定する新しい技術が模索されている。

KAISTと韓国の基礎科学研究院(IBS)、西江大学(Sogang University)、香港科学技術大学(HKUST)、シンガポール国立大学(NUS)の共同研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)が公開しているSentinel-2衛星写真を使用し、画像を6平方キロメートルのグリッドに分割した。10人の専門家が衛星画像を比較して地域の経済状況を判断し、このデータで学習したAIが各画像に経済スコアを与えた。この人間とAIの協調的アプローチにより、北朝鮮、ネパール、ラオス、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジアなどのアジア各国について、これまでにない細かい粒度の経済マップを得ることに成功した。

このモデルで得られたスコアは、人口密度や雇用、企業数といった従来の社会経済学的指標と強い相関関係を示した。これは、特に統計データの乏しい国で、このアプローチを幅広く適用できることを意味する。また、統計データを使わずに詳細な地理空間レベルで経済状況の年変化を突き止めることができるのも、このモデルの強みである。

このモデルは、貧困削減やより公平で持続可能な成長の促進など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の進捗状況を国際的に迅速にモニタリングする上で、特に有用となる。さまざまな社会指標や環境指標の測定への応用も期待できる。

(2023年12月7日付発表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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