韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は1月2日、圓光大学校との共同研究チームが、最先端の3Dプリンティング技術を利用して、内皮を形成できる細孔を備えた小口径血管(small-diameter vessel:SDV)の作製に成功したと発表した。この研究成果は、Bioactive Materialsに掲載された。
人工SDVは臨床需要が非常に大きく、数多くの商用製品が登場している。しかし、既存の大半のSDVには内皮層がないため、血栓症を起こす。均一な内皮層と適切な機械的特性を持つ人工SDVの作製は、非常に困難であることが判明している。
POSTECHのジャン・ジナ(Jang Jinah)教授らが率いる研究チームは、細孔のサイズを正確に制御しつつ細孔構造を作製することを可能にする画期的な3Dプリンティング技術を開発した。この手法を用いて多孔質・多層設計の人工SDVを作製し、天然高分子バイオインクを用いて、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とヒト大動脈平滑筋細胞(HAoSMC)を注入した。その結果、HUVECは細孔を通って移動し、人工SDVの最内層に到達して内皮を形成し、細孔サイズに応じて血管表面を被覆した。
研究チームは、人工SDV表面の最大97.68±0.4%を内皮で覆い、血小板の接着を防ぐことに成功した。このアプローチにより、細孔の存在のみによって自律的に内皮を形成できる人工SDVを作製することが可能となり、追加の処理工程が不要になった。
ジャン教授は、「開発したSDVは、その強固な安定性と機械的特性により、移植に適しているだけでなく、今後の複雑な血管構造の内皮形成にも役立つ」と述べた。
(出典:POSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部