2024年02月
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世界初、スピン四極子の直接観測に成功 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)の人工低次元電子システムセンター(IBS Center for Artificial Low Dimensional Electronic Systems)のキム・ボンジュン(Kim Bumjoon)教授率いる研究チームが世界で初めて、スピンネマティック相においてスピン四極子(Spin quadrupoles)を直接観測することに成功した。この研究成果は、Natureに掲載された。

液晶の磁気アナログは、スピンモーメントが分子の役割を果たすスピンネマティック相と呼ばれ、その存在は半世紀以上前に予想されていた。しかし、従来の実験手法では、このスピンネマティック相を決定付ける特徴であるスピン四極子に反応しないことから、直接観測されたことがなかった。

IBSの研究者らは、低温での反強磁性双極子秩序で知られるイリジウム酸化物(Sr2IrO4)に焦点を当てて研究を行った。この研究では、磁気秩序との干渉によって観測可能となるスピン四極子秩序の共存が新たに発見された。この干渉信号は、円偏光X線ビームを利用した高度なX線技術である「円二色性共鳴X線回析(circular-dichroic resonant x-ray diffraction)」によって検出された。この発見はさらに、偏光分解共鳴非弾性X線散乱(polarization-resolved resonant inelastic x-ray scattering)を通じて検証された。

これらの実験を完成させるため、韓国の研究者たちは米国のアルゴンヌ国立研究所と協力し、過去4年にわたり浦項加速器研究所(Pohang Accelerator Laboratory)に共鳴非弾性X線散乱ビームラインを建設した。

最後に研究チームらは、ラマン分光などの一連の光学的手法を駆使して、スピン四極子モーメントの形成が磁気秩序よりも高い温度で起こることを示した。この温度範囲内では、酸化イリジウムは、磁気秩序なしにスピン四重極モーメントのみを有し、スピンネマティック相を実現した。

キム教授は、「この研究は、韓国におけるX線実験のインフラと能力が世界的に競争力のあるレベルに達していたからこそ実現できた」と述べた。

PLS-IIの1C ビームラインに設置された共鳴非弾性X線散乱分光計の図 (a) とその写真 (b)
(出典:IBS)

(2023年12月14日付発表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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