韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は1月15日、化学科(Department of Chemistry)のパク・ムンジェン(Park Moon Jeong)教授率いる研究チームが、これまで理論上のものにとどまっていた、「配管工の悪夢(plumber's nightmare)」と呼ばれる複雑なブロック共重合体(BCP)のナノ構造を目に見える形で実現したと発表した。この研究成果は、Scienceに掲載された。
BCPは、1つのモノマーのブロックが別のモノマーのブロックと連結して構築されるポリマーである。自己組織化が可能であるため、多様なナノスケール構造を作り出し、半導体や医療など幅広い分野で応用されている。しかし、構造が複雑になるにつれ、熱力学的安定性が低下し、組成が非常に難しくなる。
こうしたBCP構造の1つである「配管工の悪夢」構造は、すべての出口が内側に収束しているという、とりわけ複雑な形をしている。実現された例はなかったが、その特徴的な経路構造により、他のナノ構造とは一線を画すユニークな光学的・機械的特性を持つという仮説が立てられていた。
パク教授の研究チームは、ポリマー鎖の末端に着目し、各末端に異なる分子を結合させた両末端官能基化BCPを作り上げた。その結果、ポリマー鎖末端が強固な相互引力を示し、すべてのポリマー末端が内向きに合体した。これにより、配管工の悪夢構造を世界で初めて実現することに成功した。
研究チームはさらに、ジャイロイド構造やダイヤモンド構造といった、これまで謎に包まれていたさまざまなBCP構造の実現にも成功した。
(出典:POSTECH)
この研究の特に注目すべき重要性は、BCPのポリマー組成や主鎖の化学的性質をさまざまに調整しても、末端に強力な力が存在すれば、複雑な構造を安定的に実現できるという結論にある。この研究の成果は、多様な複合構造のポリマーナノ構造の開発に焦点を当てた将来の研究に広く適用できる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部