韓国科学技術院(KAIST)は2月1日、材料科学・工学科(Department of Materials Science and Engineering)のホン・スンボム(Hong Seungbum)教授率いる研究チームが、ハイドロキシアパタイト(HAp)の骨形成能を利用して、圧力が加わると電気信号を発して骨組織の成長を促進するスキャフォールド(足場材料)を開発したと発表した。この研究成果は、ACS Applied Materials & Interfacesに掲載された。
圧電性のスキャフォールドに関するこれまでの研究では、さまざまなポリマー系材料で圧電効果が骨再生を促進し、骨融合を向上させる効果が確認されているが、最適な骨組織再生に必要な複雑な細胞環境をシミュレートするには限界があった。
圧電的および地形的に生成された生体模倣足場の設計と特性評価
(a) HApを組み込んだP(VDF-TrFE)足場によって提供される電気的および地形的手がかりを介し、強化された骨再生機構の概略図
(b) 製造プロセスの概略図
ホン教授と全南大学(CNU)の融合バイオシステム機械工学科(Department of Convergence Biosystems Engineering)のキム・ジャンホ(Kim Jangho)教授の共同研究チームは、HApをポリマーフィルムと融合させる製造プロセスを開発した。このプロセスによって開発された柔軟なスキャフォールドは、ラットを使った試験管内(in-vitro)および生体内(in-vivo)実験で、優れた骨再生促進の可能性を示した。
研究チームはまた、このスキャフォールドの背景にある骨再生の原理も明らかにした。原子間力顕微鏡(AFM)を用いてスキャフォールドの電気的特性を分析し、細胞の形状と細胞の骨格タンパク質形成に関連する詳細な表面特性を評価した。また、圧電性と表面特性が成長因子の発現に及ぼす影響についても調べた。
ホン教授は、「我々が開発したHApベースの圧電複合材料は、その骨再生促進能力により、『骨包帯』のような働きをすることができる」と述べ、「生体材料設計の新たな方向性を示唆するだけでなく、圧電性と表面特性が骨再生に及ぼす影響を明らかにした」と研究の意義を強調した。
原子間力顕微鏡を使用した生体模倣足場の圧電特性と表面特性の分析
(a) ボックスポール複合足場の PFM 振幅および位相画像。白いバーは2µmを表す
(b) 典型的な2Dラインセクションと組み合わせた複合足場の3D表現
(c) 生体内(in-vivo)骨再生マイクロCT解析
(d) 骨再生におけるフィラー由来の電気的起源の概略図
(出典:いずれもKAIST)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部