2024年03月
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ゲルポリマー電解質を利用、低コストのリチウムイオン電池システム開発 韓国

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)化学科(Department of Chemistry)のパク・スジン(Park Soojin)教授率いる研究チームが、マイクロシリコン粒子とゲルポリマー電解質を用いて、製造コストの安い高エネルギー密度のリチウムイオン電池システムを開発した。2月2日付発表。この研究成果は、Advanced Scienceのオンライン版に掲載された。

高い蓄電容量で知られるシリコンは、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の負極材料として注目されているものの、充電時に3倍以上に膨張し、放電時に元に戻る性質のため、電池効率に大きな影響を与える。ナノサイズ(10-9メートル)のシリコンを使えばこの問題は一部解決されるものの、生産プロセスが複雑で非常に高価になるという課題がある。対照的に、マイクロサイズのシリコン(10-6メートル)は、コストとエネルギー密度の点では非常に実用的だが、シリコン粒子が大きいために膨張問題が顕著になり、負極材料としての使用には限界がある。

パク教授の研究チームは、経済的でありながら安定したシリコンベースのバッテリーシステムを開発するために、ゲルポリマー電解質を採用した。ゲル電解質は、液体電解質よりも安定性に優れた弾性ポリマー構造を特徴とする。

研究チームはさらに、電子ビームを用いて、マイクロシリコン粒子とゲル電解質の間に共有結合を形成した。この共有結合は、リチウムイオン電池の動作中の体積膨張によって生じる内圧を分散させ、マイクロシリコンの体積変化を緩和するとともに構造的安定性を高める。

その結果、従来のナノシリコン負極で使用されていたシリコン粒子より100倍も大きいマイクロシリコン粒子(5マイクロメートル)でも、安定した電池性能が得られた。また、開発されたシリコン-ゲル電解質システムは、液体電解質を用いた従来の電池と同等のイオン伝導性を示し、エネルギー密度は約40%向上した。さらに、製造工程が単純であり、すぐに応用できるメリットもある。

(出典:POSTECH)

パク教授は、「この研究により、本格的な高エネルギー密度リチウムイオン電池システムの実現に近づいた」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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