2024年03月
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新たなミトコンドリアゲノムの編集技術を開発 韓国

韓国・高麗大学校(Korea University)のイ・ヒョンジ(Lee Hyunji)准教授らによる研究チームが、現在のゲノム編集技術の大きな限界に対処する新たなミトコンドリアゲノム編集技術を開発し、世界で初めてA-to-GミトコンドリアDNA(mtDNA)編集を達成した動物モデルの作製に成功した。2月2日付発表。この研究成果は、Cellに掲載された。

この研究は、遺伝性疾患の臨床的治療法に革命をもたらす可能性があり、より安全で信頼性の高い遺伝子操作法の開発に貢献することが期待される。

哺乳類のmtDNAの標的塩基編集は、ミトコンドリア遺伝病をモデル化し、潜在的な治療法を開発するための強力な技術である。カスタムDNA結合タンパク質と核酸塩基デアミナーゼ(nucleobase deaminase)で構成されるプログラマブル・デアミナーゼは、正確なmtDNA編集を可能にする。しかし、現在のゲノム編集アプローチでは、転写活性化因子様エフェクターリンクデアミナーゼ(TALED)を使用する際に何千もの標的外のA-to-G編集が生じるなど、多くの限界がある。

この限界の克服を目指し、イ教授らの研究チームは、A-to-G精密編集を向上させるTALEDの開発に取り組んだ。開発したTALEDは、標的外RNA編集を99%以上減少させ、特定の標的部位においてmtDNAの標的外変異とバイスタンダー編集(編集過程で標的部位に近いゲノム上の場所で起こる意図しない変化)を最小限に抑えた。また、オリジナルのTALEDとは対照的に、毒性を示すことも、マウス胚の発育停止を引き起こすこともなかった。

この結果、研究チームは、ミトコンドリア遺伝病であるリー症候群に関連する病原性mtDNA変異を持つマウスを作製することに成功した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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