韓国の光州科学技術院(GIST)は2月21日、電気工学・コンピューターサイエンス学科(School of Electrical Engineering and Computer Science)のイ・ドンソン(Lee Dong-Seon)教授率いる研究チームが、有機金属気相成長法(metal-organic chemical vapor deposition:MOCVD)のみを用いた窒化ガリウム(GaN)半導体のホモエピタキシー技術を開発したと発表した。この研究成果は、ACS Applied Materials & Interfacesのオンライン版に掲載された。
LEDディスプレイや電気自動車の充電デバイスに広く使われているGaN半導体は、次世代電気自動車のパワー半導体材料として注目されている。高効率のGaN半導体の製造にはGaNウエハーが必要だが、サファイアウエハーに比べ価格が100倍もするため、結晶の質が1,000分の1のサファイアウエハーが使われてきた。
この高価なGaNウエハーの再利用を可能にする技術として期待されているのが、ウエハーの上に極薄型の2次元材料を形成して、その上で半導体材料を成長させる「リモートエピタキシー(remote epitaxy)」と呼ばれる技術である。しかし、GaNリモートエピタキシー技術を実装するには、分子線エピタキシー法(molecular beam epitaxy:MBE)とMOCVDを併用する必要があった。これは、MOCVDのみを適用した場合、高温成長状況下でGaNウエハーの表面が分解し、2次元材料挿入層が損傷するためである。
この課題に対応するため、イ教授の研究チームは、産業界で広く使われているMOCVDのみを用いる方法を開発した。2次元材料が形成されるGaNウエハー上に低温のGaN緩衝層を成長させることで、2次元材料を完全に覆って保護しながらGaN半導体を成長・剥離することが可能なGaNリモートホモエピタキシー技術を初めて実装した。
この研究成果は、結晶性の高い高価なGaN半導体の低コストの量産への道を開くことが期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部