韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は2月13日、同校の研究チームが、細胞間コミュニケーション(cell-to-cell communication)について訓練した人工知能(AI)を用いて、がんの免疫治療で用いられる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に対する反応性(drug responsiveness)を予測したと発表した。
この研究は同校生命科学部(Department of Life Sciences)のキム・サングク(Kim Sanguk)教授とイ・ジュフン(Lee Juhun)博士が率いるチームと、マイクロバイオーム治療技術を開発する企業イムノバイオーム(ImmunoBiome)が共同で行ったものであり、研究成果は学術誌Science Advancesに報告された。
ICIは画期的ながん治療法として脚光を浴びているが、1種類のICIに反応する患者は3分の1に満たない。効果的な治療薬を処方し、反応しない患者への新たな治療戦略を確立するには、患者の反応を予測することが不可欠である。
同チームは2022年にこのAIモデルを開発し、細胞内のタンパク質相互作用について訓練した。今回の研究ではさらに進んで細胞間のコミュニケーションネットワークを学習させ、がん細胞と免疫細胞が情報をやりとりするネットワークの分析に基づきICIに対する患者の反応性を予測できるようにした。
(出典:POSTECH)
このモデルは4種類のがんのいずれかを有する4,700人の患者から収集した検体の分析において高い正確性を示した。さらに、ICIへの反応性と抵抗性にかかわる重要なコミュニケーション経路を発見し、これらの相互作用に関連する細胞を特定した。
キム教授は、「この研究はがんに対するカスタマイズされた免疫療法を可能にし、各患者に対し個別化された治療戦略を設計するうえで役立つ。細胞間コミュニケーションネットワークは免疫系の機能を支配する基本原則となっており、さまざまな免疫関連疾患への個別化治療の開発に応用できる可能性がある」と、今後の展望を語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部