韓国科学技術院(KAIST)は3月5日、同院の研究チームが、グルコースなどの再生可能な炭素源から工業的に有用な化合物である酢酸ベンジルを効率的に生産する初の微生物プロセスを開発したことを明らかにした。この研究成果は、Nature Chemical Engineeringのオンライン版に掲載された。
KAISTの化学・生体分子工学科(Department of Chemical and Biomolecular Engineering)のイ・サンヨプ(Lee Sang Yup)特別教授率いる研究チームは、環境に優しい酢酸ベンジルの生産方法の実現を目指し、同教授が創設した研究分野である「システム代謝工学(system metabolic engineering)」を通じてグルコースを酢酸ベンジルに変換する大腸菌株を開発した。
上流株と下流株の共培養による酢酸ベンジルの生産
研究チームは、酢酸ベンジルを効率的に生産するために考案した遅延共培養法により、菌株の改良や酵素の追加の必要なく副生成物の生成を抑え、目的化合物の濃度を10倍に高めて、1リットル当たり2.2グラムの酢酸ベンジルを生産することに成功した。さらに、この微生物プロセスに関する技術経済分析を通じて、酢酸ベンジルの商業生産の可能性を確認した。
イ特別教授は、「持続可能な方法によって有用な化学物質を生産する微生物プロセスの種類と数を増やすとともに、微生物株の開発中に生じる問題を解決する効果的な戦略を開発できれば、石油化学産業から環境に優しく持続可能なバイオ産業への移行を加速できるだろう」と述べた。
酢酸ベンジルの生産を向上させるための Bn1 株と Bn-BnAc3 株の遅延共培養
(出典:いずれもKAIST)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部