韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は3月6日、生命科学科(Department of Life Sciences)のチェ・ギュハ(Choi Kyuha)教授らの研究チームが、減数分裂時の「乗り換え干渉(crossover interference)」現象を引き起こす分子メカニズムを解明したと発表した。この研究成果は、Nature Plantsに掲載された。
ほとんどの動植物種は、1対の相同染色体当たり1~3回の乗り換えを示す。乗り換えの数を制御できれば、特定の望ましい形質を持つ作物の栽培につながる可能性がある。しかし、そのような制御を困難にするのが、ある乗り換えが同一染色体に沿って別の乗り換えを阻害する「乗り換え干渉」と呼ばれる現象である。発見以来1世紀以上にわたり研究されてきたにもかかわらず、この現象の機構は解明されていなかった。
チェ教授の研究チームは、ハイスループットな蛍光法による種子スコアリング(high-throughput fluorescent seed scoring)法を利用して、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の乗り換え頻度を直接測定した。遺伝子スクリーニングにより、ゲノムレベルで乗り換え率の上昇を示す変異体「hcr3(high crossover rate3)」を同定した。さらに解析を進めた結果、hcr3における乗り換え率の上昇は、HSP40タンパク質に関連するコシャペロンをコードするJ3遺伝子の点突然変異に起因することが明らかになった。
この研究により、HCR3/J3/HSP40コシャペロンとシャペロンHSP701を含むネットワークが、乗り換えを促進するタンパク質であるHEI10ユビキチンE3リガーゼ(HEI10 ubiquitin E3 ligase)の分解を促進することにより、乗り換えの干渉と局在を制御していることが示された。
(出典:POSTECH)
チェ教授は、「この研究を農業に応用すれば、有益な形質を迅速に蓄積することが可能となり、育種にかかる時間を短縮できる」と述べ、今回の研究成果が新品種の育種や有益な自然変異の同定に貢献するとの期待を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部