韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は3月21日、材料科学・工学科(Department of Materials Science and Engineering)の共同研究チームが、従来の触媒の限界を克服した経済的で効率的な水電解触媒の開発に成功したと発表した。この研究成果は、Advanced Materialsに掲載され、掲載号のインサイドフロントカバーに採用された。
水電解プロセスは、環境汚染物質を排出することなく水素燃料を製造できる技術だが、触媒として高価なプラチナなどの貴金属を使用するため、コストがかさむ。さらに、従来の薄膜触媒では、水素の泡の分離が不十分になることが多く、水素生成効率が低いという課題があった。
このような課題に対処するため、キム・ジョンギュ(Kim Jong Kyu)教授らが率いる研究チームは、斜め蒸着法とニッケルを採用した。斜め蒸着法は、蒸着中に基板を傾けることで材料の多様なナノ構造を作り出すもので、簡単で安価な方法である。また、ニッケルは地球上に豊富に存在する非貴金属触媒であり、水素製造において比較的高い効率を示す。
水素の付着問題を解決するため、研究チームは、単に触媒の表面積を増大させる従来のナノ構造ではなく、独自のスーパーエアロフォビックな(superaerophobic)表面特性を示す多孔質のニッケルナノロッドアレイを開発した。これにより、電解プロセス中に発生した水素の泡を表面から迅速に分離することが可能になり、従来の薄膜構造の同量のニッケルと比較して水素生成効率が5倍に向上した。
キム教授らは、「このブレークスルーは、水の電気分解に役立つだけでなく、二酸化炭素の還元や光エネルギー変換システムなど、表面反応が重要な役割を果たす他のさまざまな再生可能エネルギーにも応用できる」との期待を示した。
(出典:いずれもPOSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部