韓国の光州科学技術院(GIST)は4月4日、同院の研究チームが、量子力学系がカオス状態にあるかどうかを判定する方法を発見したと発表した。この研究成果は、Physical Review Dに掲載され、掲載号のエディターズ・サジェスチョンに選ばれた。
古典力学において「カオス」とは、物体の初期状態が少しでも変わると、物体の進路が大きく変化することを意味する。どのような量子力学的カオスが古典力学的カオスに相当するかは、まだ完全には解明されていない難問の一つである。従来の方法では、特定の量子状態に応じて変化するカオス現象を説明するには限界があった。
こうした限界を克服するため、物理学・光量子科学科(Department of Physics and Photon Science)のキム・クンヨン(Kim Keun-Young)教授のチームは、スタジアム型のビリヤード台上に存在するビリヤード球の量子ダイナミクスを、スペクトル複雑性(spectral complexity)を用いて解析した。スペクトル複雑性とは、任意の系の複雑性が時間とともにどう変化するかを、量子力学系の量子化されたエネルギー準位を用いて定義する量である。
古典力学的なビリヤード球の場合、ビリヤード台の形状が円形(R=a)であればカオスは発生せず、円形でない(R≠a)場合はカオスが発生する。これに対応して、量子力学的なビリヤード球の場合、ビリヤード台の形状が円形(R=a)であれば、スペクトル複雑性は大きい。円形でない場合(R≠a)は、スペクトル複雑性は小さい。このように、スペクトル複雑性は量子カオスを決定する方法として使うことができる。
この研究成果は、既存の量子カオス判定法の限界を克服するとともに、量子カオスの性質をより正確に特定し、量子ブラックホールや宇宙の初期現象の理解を深めるものである。また、量子デバイスや量子コンピューターの開発への応用も期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部