韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は4月15日、生命科学科(Department of Life Sciences)のチョ・ユンジェ(Cho Yunje)教授率いる研究チームが慶熙大学校(KHU)、米南カリフォルニア大学、英オックスフォード大学の研究チームと共同で、聴覚に関する特定の受容体タンパク質の働きを解明したと発表した。この研究成果は、Nature Structural & Molecular Biologyのオンライン版に掲載された。
(出典:POSTECH)
聴覚を司る内耳の蝸牛と平衡器官を司る前庭器官にある細胞には、GPR156と呼ばれるクラスCのオーファンGタンパク質共役型受容体(G-protein-coupled receptor:GPCR)が存在している。この受容体が活性化されると、細胞内のGタンパク質と結合し、シグナル伝達を促進する。他の受容体とは異なり、GPR156は、外部刺激がなくても持続的に活性化し、聴覚や平衡機能の維持に重要な役割を果たしている。
研究チームは、クライオ電子顕微鏡(cryo-electron microscopy:cryo-EM)解析を用いて、活性化因子がなくても活性の亢進を維持できるGPR156のメカニズムを明らかにした。
解析により、GPR156の活性化は、細胞膜に存在する豊富な脂質との相互作用に依存しており、細胞質内のGタンパク質と結合することで構造的変化を引き起こすことが確認された。注目すべき点として、標準的なGPCRとは異なり、GPR156は細胞膜を通過する際に第7ヘリックスの構造を柔軟に変化させ、それによってGタンパク質との結合を促進し、音を感知するためのシグナル活性化を調整していることが明らかになった。
チョ教授は、「我々の研究が、聴覚障害や平衡感覚障害に対する画期的な治療法や創薬への道を開くことを期待している」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部